風邪と薬(解熱剤編)
[2016年12月19日]
風邪をひいたときに、当クリニックでも解熱剤を出す事があります。最近は当たり前の事なのであまり詳しく説明をする事がなくなっていたのですが、もしかしたら分かっておられない方もいらっしゃるのではないかと思い、記載することと致しました。
そもそも風邪をひいたときに熱が出るのはどうしてでしょうか?熱は悪いものなんでしょうか?
答え 感染症に対する発熱は人体にとって基本的には有益な反応です。
身体に害をなす細菌・ウィルスが入った場合、防御反応として脳が指令を出して体温を上げます。体温を上げることによって主に以下の対応・反応を促します。
①病気にかかったことを認識し、準備を促す。寝るなど身体を休ませる。
②ウイルスや細菌が体内で増えにくい環境を作る
③白血球を増やしたり、サイトカインを出したり、免疫機能の強化をする
など行い、ウィルスや細菌と闘う環境を整えます。
昔やられていたことですが、風邪に対して1日3回食後に解熱剤(カロナール コカール、時にPL顆粒)を飲むという事は現時点では間違いとされています。
数々の研究で解熱剤は症状を悪化、遷延化させると結論が出ています。
よくあるパターンとして、解熱剤を投与して熱が下がったら子供が寝ていられなくて遊んでしまう。時には解熱剤で熱が下がっているので保育園に連れて行ってしまう方もみえます。解熱剤で一時的に熱が下がっていても、治ったわけではありません。錯覚です。悪化してしまうのでしっかり休ませましょう。ちょっと良くなったらすぐに保育園などに行く結果、症状が長引いて「先生。薬を飲んでいるのに長引いています。薬が合わない。もっと効く薬を下さい」「何か重大な病気なんじゃないでしょうか?」と、相談されてしまいます。
お子様が病気を治せる環境作りをすることが何よりも大事です。それをせずに薬だけでどうにかしようとするのはいいことではありません。あくまで薬は病気を治す手助けなのです。(もちろん共働きの方が大変ご苦労されていることは理解しておりますし、一生懸命働かれているご両親を非難する気はありません)
では、解熱剤は絶対使ってはいけないのか?
それには医師で若干意見が異なります。
当クリニックでは以下のように指導しています。
熱が高くて水分摂取が出来なければ脱水が進行し、状態が悪化してしまいます。そのような場合には解熱剤を使用して一時的に熱を下げ、その間に水分摂取をしっかりしましょう。
また、熱が高く、本人の機嫌がとても悪いときには(痛みを伴っていることもあるので)症状を緩和させるために単発の座薬は許可しています。(ただ、これには他の医師から反論があるかもしれません)
風邪の熱などは41.5℃以上には上がらないとされています。それ以上に上がらなければ熱だけで脳に障害が起こったりはしないと言われておりますのでご安心ください。
もちろん以上のことは解熱剤についての説明です。「どんなに熱があってもどんな病気でも薬を使わずに寝かせておけばいいんだ」という極論ではありません。熱がなくても重症な事もあります。全身状態の評価を正しく行う。重症化する病気の鑑別をするなどの正しい診断を行う必要があることは言うまでもありません。
どの薬もそうですが、正しく使用されなければいくらいい薬でも効果がないばかりか逆に害となることがあります。どうしてその薬が出されたのか理解出来なければ聞いて下さい。お答え致します。それとやっぱり飲む薬の種類は少ない方がいいと思います。
病気をどうすれば早く治せるか?健康を維持する秘訣などについては当クリニックの患者様に向けて勉強会を単発で行っております。ご希望の方はメーリングリストに登録してお待ちください。ただし、話の内容によっては定期的に当クリニックを受診されている方しかご案内をしておりません。