こども達の姿勢について
[2024年09月19日]
開業して11年。当初はしっかりとした姿勢で座れている児もちょくちょく来られていましたが、ここ数年はそういう子に出会うこともほぼなくなってしまいました。毎日こども達の診療を行っている小児科医としては、なかなかに辛い現実です。中学校の校医、幼児園の園医もしていますが、厳しい状況に直面しています。とうとう園児にも側弯が出始めてしまいました。
こどもの姿勢問題は大変重要であるものの、残念ながらほとんどの方が理解できていませんし、実感できない問題です。なぜなら自分の子供だけでなく、周りのこどものほとんどに問題があるからです。
運動器検診を厳格に行えばほとんどの児が引っかかってしまいます。でも、現状では「からだが硬い」?ということで適切な対応がほぼ出来ていません。
お子さまの姿勢をチェックしてみましょう。「座ったときに背もたれに身体を預けて腰が曲がっている」「背中が丸まっている」「頚が前に出ている」「巻き肩になっている」「姿勢良く座っている状態を最低15分維持出来ない」「踵をつけてうんこ座りが出来ない」どれか一つでも該当するなら少なくとも普段から正しい姿勢はとれていません。
また、ほとんどのこども達が前弯が腰椎ではなく、胸椎(もしくは胸椎から腰椎上部)に出てしまっています。間違いなく、近い将来に腰痛の発症をします。
姿勢が大切ということは今更というほど様々な分野で説明されています。
病気・ケガ:姿勢が悪いことで体調不良になることが増え(頭痛、立ち眩みなど)、様々な病気のリスクが上がります。側弯症が悪化すると手術が必要となります。
学習:2時間勉強が出来る姿勢がとれるかどうかで学力に大きく差が出る。
運動・スポーツ:正しい姿勢がとれなければ骨格筋に頼る動きがメインとなってしまうため、思ったように上達することが難しく、ケガが増える
習い事(習字・茶道・華道・ピアノなど):軸が通った正しい姿勢がとれないとブレる。上達しづらい。
その道で一流と言われている人たちを見れば姿勢の大切さがよく分かると思います。
人の身体は18歳を目指して完成に向かい(昔は15歳)、その後人によって差はありますがみんな老化が進行します。今の多くのこども達は完成に向かう前に身体が固まり(老化)始めてしまっています。10代、20代、30代は最高のパフォーマンスが出来る時期ですが、その時期の最大値が下がってしまっていますし、若くして腰痛など体調不良に悩まされるようになっています。
何においても姿勢はとても大切なのに、現在はおざなりになっています。習い事を一生懸命させている家庭でも正しい姿勢に目を向けているところは少ないのではないでしょうか。
昔は姿勢について家庭や学校、塾などで厳しく言われていました。最近はなかなかそういった事を繰り返し正しく指導してくれる人も稀になってしまいました。
正しい姿勢と言われても、周りの大人も分からなくなってしまっているので指導も難しいのが現実です。(大人の姿勢が悪いのですから・・・)
それと実はこどもの姿勢を治すのはなかなかに難しいのです。なぜなら、周りのお手本になるべき大人の姿勢が悪く、こどももなぜ姿勢を直さなくてはいけないかが理解、納得出来ないからです。(例えが適切かは分かりませんが、肥満のお子さまがいます。体重をこれ以上増やしてはいけないことは分かっています。しかし、お父さん・お母さんも太っていて、好きなようにお菓子や食事を取っています。両親がこどもに食事制限を指示してもこどもの体重が減るでしょうか?生活習慣が原因の問題は家族全員で取り組まないと改善は難しい例えです)
こども達の姿勢の悪化が更に加速してゆく現状、何か出来ることは無いかと保護者の方に向けて姿勢に重点を置いた「ゆる~く古武術・・・」のクラスを開設しました。ご両親に更に健康になって欲しい。こども達のお手本になって欲しい。更には正しい姿勢を指導できるようになって欲しいと思っています。
可能であればお子さまが小さい内にご両親には正しい姿勢を獲得して欲しいなと思いますが、遅いということはありませんので気になったときから始めてみましょう。
希望者は当クリニックに受診しているなどは関係なく受講が可能です。お申し込みは大東流合気柔術・光心会のHPからお願いします。